「かぜはふり」は、現代の読み方では「かぜほうり」です。漢字で書くと「風祝」です。
現在でも、神道で神職に付いている人を総称して祝と呼びます。風祝は風(風神)を祀る神職です。主に台風を鎮めるための祭事(風祭)を執り行いました。
現在では存在しない職ですが、かつては長野の諏訪大社に存在しました。木曽四天王の一人である手塚光盛は、諏訪大社下社の風祝の一族(手塚氏)だそうです。
この「はふり」という言葉は面白く、性質が極端に異なる言葉の語源になっています。「祝る」という字をあてた時は、「祝う」と同じ意味で、「神に祈る」という意味を持ちます。しかし「屠る」という字をあてた時は、「殺す、滅ぼす、解体してバラバラにする」などバイオレンスの意味になり、「葬る」(ほぶる/ほうぶる)という字をあてた時は、「死者を埋葬する、ほうむる」という意味になります。
いずれも神に対して、祈りを捧げ、生贄を奉じ、死者の霊を送り出していたことに由来するようです。
漫画『かぜはふり』では、これらの複層的なニュアンスをそのまま内容に反映しています。戦勝を祈って風神を祝り、風の吹くままに葬られ、風と共に戦場から放られています。
この調子で考えると、「かぜはふり」に「風邪屠り」という字を当てれば、かぜ薬やワクチンの意味になると言えそうです。反ワクチン派の人に「ワクチンを打て!」と命じても拒絶されますが、「風邪屠りを打たれたし」と命じれば風雅な気分になって打ってくれるかもしれません。そんなわけない。