またカメラネタです。「いつからカメラブログに変わったの?」と謗 られること必至ですが、ここは僕の部屋です。やりたいようにやらせていただく。
今日は僕がお気に入りのカメラ、Nikon 1 J5 について書きます。
ニコワンの歴史
Nikon 1 シリーズ(通称ニコワン)は、2011年に始まった、ニコン初のミラーレスシリーズです。今日のニコンZシリーズと異なり、センサーサイズが1インチと非常に小さく、ボディとレンズも小さい。当時コンパクトさと画質のバランスでブイブイ言わせていたフォーサーズ陣営への対抗馬でした。
ところが2011年といえば、スマホがカメラ市場を本格的に侵食し始めた頃でした。カメラ出荷台数は2010年をピークに減り続け、2020年にはピーク時の10分の1にまで落ちています。ニコワンは不遇の時代に生まれ、ほとんどユーザーを獲得できず、2015年の Nikon 1 J5 を最後にひっそりと開発終了しました。
ニコワンは技術的・マーケティング的に多くの問題を抱えており、今思えば敗退は避けられませんでした。
まずニコワンのセンサーは画質が低く、大衆には「スマホで十分じゃん」としか思えないものでした。ニコンは交換レンズによる多様な表現ができることをアピールしようとするも、レンズの発表順がまたマズイ。セットで付けた便利ズームレンズでは画質的に魅力がないので、明るさ f/1.2 の大口径単焦点レンズや、手持ちサイズの810mm超望遠ズームなどを発表しますが、10万円以上と高額すぎてマニアにしかウケませんでした。
最後の J5 になって、ようやく画質が目に見えて向上し、「ボケを楽しもう」というセールスフレーズに見合う小型単焦点レンズとのパッケージングも完成したのですが、時すでに遅し。世論は「スマホか、大型センサーカメラか」の2択で商品を選ぶようになっており、中途半端なポジションのニコワンには誰も見向きしませんでした。そして、ニコワンは舞台を去りました。
ニコワンのチャームポイント
さて、僕が今も所有しているのは、引退作の J5 と、単焦点レンズの 18mm f/1.8 および広角ズームの 6.7-13mm f/3.5-5.6 です。メイン機の D810 に比べればもちろん画質はずっと落ちますが、多くのシチュエーションでは必要十分です。
J5 ならではのメリットは、以下のように多岐に渡ります。
- 単焦点レンズ+ボディは 300g ほどしかなく、両手にスッポリ収まります。体への負担も皆無。
- J5 はチルト式液晶で、液晶をタッチしてシャッターも切れるので、地面スレスレでも楽に写真が撮れます。
- ネックストラップで首にぶら下げておけば、チャンスに気づいた瞬間にノールック撮影ができます。
- シャッター音が小さく、お辞儀姿勢でチルト式液晶ごしに撮影できるので、被写体に警戒されません。
盗撮向き - 安い。今ならレンズキットが中古で3万円程度。
- 安くて小さくてもニコン品質。5年以上ぞんざいに扱ってますが、故障はありません。
- 画質はスマホよりずっとクリア。ISO 1600 までは破綻が少ないので、室内でも OK。
- 単焦点は被写体にかなり寄れる(最大撮影倍率 約0.32倍)ので、テーブルフォトやブツ撮りにも強い。
- 2000万画素をそれなりに解像するので、現像時にクロップ(切り出し)で構図を直しやすい。
- 大型カメラより画質がショボい点は、スナップショットではさして問題になりません。
- 性能ゴリ押しの絵作りができず、おもしろポイントを明確に絞り込まねばならないため、画作りのよい訓練になります。
- ちなみに旅行好き・カメラ好きで知られる藤子・F・ゴッド・不二雄も、よくコンパクトカメラをぶら下げ、世界中で写真を撮っていたそうです。
スマホじゃカメラに代われない
つい最近になって2年ぶりにカメラ熱が高まってきた僕ですが、きっかけはフリマに出品する商品を J5 で撮影したことでした。スマホより撮りやすいし、撮ってて楽しい。カメラを持って街に出ると、普段見えてなかったものが次々に発見できるのも面白いです。
現在ではスマホのカメラ性能が進化し、ニコワンの画質的な優位性は小さくなっています。しかしニコワンの撮影スタイルはスマホには真似できません。またスマホは3年で陳腐化しますが、良いカメラは長く機能を保ち続けます。なにより撮影に臨む時の高揚感は、スマホでは呼び起こせません。カメラは撮影者の感受性を拡張し、日常の見方を新しくします。
復活希望
今の技術なら、2015年当時よりさらに高品質で魅力的な製品が作れるはず。ニコンはZシリーズのことで頭がいっぱいでしょうが、久々にニコワンを思い出していただきたいです。
死んだと思っていたキャラが復活すると、誰しもが盛り上がります。きっと僕も「お…お前、ニコワン?ニコワンなんだろ?」と泣きながら飛びつくことでしょう。どうか復活を。